「トンボ少年のつくり方」
インターネットで「赤トンンボ」を検索したら5240件の項目が出てきた。
日本の国はいいなあとつくづく思う。こんなにトンボが暮らしなかに入りこんでいる。豊かな森林や里山を持つ国だと感動する。
先日、小さな子どもが山小屋にやってきて、トンボ捕りに連れていってくれと言う。得たりや応だ。でも、初めてトンンボ捕りに出かけるときにはルールがあると厳かにぼくは言った。
ぼくが網を持ってトンボを捕るから、トンボの持ち役になること。
それでよければと言ったら、大喜びして森の中についてきた。
1匹目を捕った時トンボの持ち方を教えた。1匹目のトンボは親指と人差し指に羽を挟んで持つこと。次ぎに捕ったトンンボは人差し指と中指の間に挟ませる。3匹目は中指と薬指の間。なにせ、小さな手だし、トンボは手足を振り回しあばれるから結構むずかしい。
そうやって全部の指の間にトンボの羽を挟んだら8匹で満杯になる。
ぼくは9匹目で子どもの口を開けさせ、羽をくわえることを覚えさせた。柔らかく、優しく、よだれが羽につかないように。
羽をふるわせるトンボを逃がさないように、口で案配するのはかなりむずかしい。でも、よだれをたらしながらでも、ようやくくわえられるようになった。はい!トンボ少年の出来上がり!
きっと、あのトンボ少年は抱きかかえたトンボの、口や手に感じた命の動きを忘れることはないだろう。
この絵本を作りたいと思ったのは「トンボの死」についてだれも何も知らないからだった。知っていても小川に流れていたとか、山道に落ちているという話しだ。それに最近よく聞くようになったのは、車で遠出の時、車体に張り付くように死んでいた無数のトンンボの話しや、高速道ではねられて死んでいる何匹ものトンボの話しだった。
ぼくは友人から「トンンボの墓」を見たという話しを聞いてすっとんで新潟に行った。部屋を借り、毎日トンボが暮らしている小川の畔や草藪に入れてもらったのだった。
知っていると思っていたトンボの暮らしは驚きの楽しさがあった。
そして「さよなら」していくトンボには感動があった。
ぼくは、あのトンボ少年に見せたいと思った。
|